令和7年6月下席[21(土)〜30(月)]の上野鈴本演芸場夜の部での主任興行が近づいてきました。
今回は十日間休みなく勤めさせていただくうえ、毎日違う演目をあらかじめご案内させていただいております。
せっかくなのでそれぞれにまつわる私自身のエピソードをご紹介しようかなと。えへへ。
というわけで、まずは「叩き蟹」からお付き合いくださいませ。
「叩き蟹」の一席を初めて聴いたのが、たしか三遊亭圓窓師匠のCDだったと記憶しています。
サゲとともにお客様が拍手しているのを聴きながら、「あああぁぁぁぁ……」って感じでしたね。いや、わかりにくいか(笑)。
落語の奥深さに圧倒されたってえのかな。「圓窓師匠スゲエな〜」と、改めて思ったのであります。
圓窓師匠からは二ツ目の時に「田能久」を教えていただいたのが最初で、それから「武助馬」「桶屋裁き(佐々木政談)」と習って、四席目となったのが「叩き蟹」でした。
圓窓師匠がご自身で編纂されている『高座本』。一席ずつセリフから演出に至るまで書かれている素晴らしい稽古本です。
まずはこれを読み込むところから始まり、それから時間をかけてセリフを覚えて演じることができるようになったら、「上げ」と呼ばれる稽古をしていただきます。教えてくださった師匠の前で実際に演じて、細かく直していただくのが「上げ」です。
「叩き蟹」の上げでは、あまり直されなかったですね。それよりも次に習った「五百羅漢」の時のほうがいろいろと直しが入って、細かくアドバイスも頂きました。どちらにしましても、圓窓師匠から習った噺はすべて私の宝でございます。
「叩き蟹」のテーマは『魂』です。漠然としている言葉ですけど、なんだか説得力がある『魂』という言葉。
ここでは「叩き蟹」の内容はあえて語りませんが、江戸を舞台にしながらも全時代的に胸に響く噺です。
この噺を身につけてから、落語に対する意識がそれまでと変わったのは間違いないです。私の魂を感じていただける高座を繰り広げたいとそれからは常に思っています。
6/21(土)の初日はこの「叩き蟹」の一席。ぜひぜひ上野鈴本演芸場にお越しくださいませ。どうぞよろしくお願いいたします。
★2025年6月21日(土)~30日(月) 鈴本演芸場主任興行「桂やまと本寸法厳選十席」詳細はこちら→ https://yamato3rd.com/?p=4729