24(火)の四日目は「宿屋の仇討」でございます。この噺は「百川」と同じく柳家甚語楼兄さんから教わりました。

私の公演記録を見てみましたら、2017年5月14日の『第27回 桂やまと独演会』で初演してました。会場が『四の日昼席』でおなじみの巣鴨庚申塚・スタジオフォー。8年前になりますね。あの時ボクは、若かったなぁ……。えへへ。

「宿屋の仇討」は二ツ目のうちに覚えて演じている人が多い印象なんですが、私は二ツ目時分に「やるぞ!」ってゴーサインがどうしても出せませんでした。なんだろう、噺との相性ってんですかねぇ。私には合ってないような気がして。

だから「宿屋の仇討」をやる気になったのも、稽古して覚えたのも真打になってから。仇討ものは「花見の仇討」だけで十分って勝手に思ってたんですよね。

そうして初演を終えてみて、「やっぱり合わないかも……」と感じてそれからしばらくはお蔵入り。結局のところ、これまで数えるほどしかやってないんです。

ですが昨年久々に独演会でやってみて、ガラリと印象が変わりました。体にしっくりきたんです。体というか、心かな。

あとで録音を聴いてみても実に自然な高座。お客様も大いに笑ってくださってました。

この噺のポイントはズバリ「侍の万事世話九郎なる人物のイライラと我慢を、どれだけナチュラルにお客様にお届けできるか」ですね。うん、自然体。作りこんじゃうと、あざとくなる。

「そりゃ怒るわな」と侍の気持ちを共有していただくためには、これまた江戸っ子三人組が無邪気で可愛くないといけないわけで。

そんなことに気づけたのは、他のいろんな噺を経験してきた蓄積のおかげだと思っています。発想も了見も、その落語家が歩んできた修行の反映です。

ホントに『経験はチカラ』と言えるのが落語という芸能です。寄席で演じるのは初となります。桂やまとの「宿屋の仇討」、ぜひお楽しみくださいませ。よろしくお願いいたします。

★2025年6月21日(土)~30日(月) 鈴本演芸場主任興行「桂やまと本寸法厳選十席」詳細はこちら→ https://yamato3rd.com/?p=4729

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